Non-Fungible Love 〜 case. MACHIKO 〜 with 肉まん
アンコールの曲が終わり、席を離れる人の波が始まって夢の時間が過ぎ去ってしまったことを実感する。
余韻に浸るのもそこそこに、その波に合流して大急ぎで新大阪へ。
購入済みの新幹線グリーン車シェアチケットは、時間指定があるので絶対に乗り遅れるわけにはいかないのだ。[※1]
「ゆりあ、またね!今度こっちにも遊びにきて!」
地下鉄の乗り換え駅で、閉まりかけのドアのあちらとこちらで手を振る。
(次に会う時には、もっと全面的に幸せを応援する気持ちで彼氏の話を聞いてあげられたらいいな。)
大きなぬいぐるみを抱えスーツケースを転がしながら、何とか新幹線のホームにたどり着くと、ちょうど1本前の便の到着アナウンスが流れているところだった。
自分の便までの数分で売店に寄って飲み物くらい買いたいような、一瞬の迷いが生まれるが、この大荷物での無理は禁物と、大人しくグリーン車の乗車列に並んだ。
体力を使い果たした体をグリーンのシートに沈めて一息つくと、スマホの通知に気づく。
今日のライブ参戦者の振り返りチャットルームが盛り上がっていた。[※2]
昔はSNSでのネタバレ厳禁で、当日の振り返りトークは実際に一緒に行った友人とだけのささやかな楽しみだったけれど、いまはチケット履歴で集まったメンバーだけのチャットルームで全力ネタバレトークができるのが楽しい。
自分と逆側の席の人からはそんな風に見えてたんだ、とか、やっぱりあそこはアドリブでのサービスだったよね、とか、お気に入りの作品の原画展や設定資料を見て楽しむように、ひとつの出来事を何度も噛み締めて楽しめるって幸せだなあと思う。
チャットの盛り上がりも一区切りついて、新幹線のドアの上のモニターを見ると「掛川を通過しました」の文字が流れている。
(静岡、長いんだよなぁ。)
そういえば新大阪の駅で551の肉まんを買わなかった。
前回大阪に来たときは自由席のチケットだったから、新幹線を何本か逃してでも買いたいと主張する元カレの熱意に笑いながら長蛇の列に並んだっけ。
あったかい内に食べたい!と、周囲にニオイを充満させる申し訳なさと共にこそこそかぶりついたあの美味しさを思い出して、小さくお腹が鳴った。
夜道を歩き、ようやく帰宅。
1日中出まくっていたアドレナリンが切れたのか、どっと疲れを感じる。
すべて放り投げてベッドにダイブしたい気持ちを我慢して、偉いぞ自分と自らを鼓舞しながら荷解きをして洗濯物を洗濯機に放り込み、湯船にお湯を溜める。
お湯が溜まり切るまでもうちょっと、という隙間時間に、今日ゲットしたぬいぐるみの特典カードがぬいぐるみの手のひらからNFCで取得できると聞いていたことを思いだし、スマホを取り出した。[※3]
(ーーーえっ、さとし、、なんで、、?)
画面に浮かぶのは半年ぶりの元カレからのメッセージ通知。
困惑して固まったまちこの部屋に、空気を読まない愉快なメロディーと「お風呂が沸きました」の電子音が響いた。
NFL case. MACHIKOは今回で終了です。次のシリーズの公開は公式Twitterでお知らせします。
ぜひフォローしてお待ちください。
前回のお話↓