Non-Fungible Love 〜 case. MACHIKO with ドーム 〜
「ゆりあ!」
午前中の改札前は人の流れもまばらだ。手を振って歩いてくる親友の姿をすぐに見つけることができた。
リアルでは1年以上ぶりに会う高校時代の親友ゆりあは、数年前に転職していまは大阪に住んでいる。ただ、毎日のように推しメンについてのトークをしているのでまったく久しぶりな気がしない。
どうやらこちらが興味を持っていなかった頃は気を遣ってほとんどアイドルの話をしていなかったので気づかなかったけれど、実はゆりあの方が先にハマっていた。それを知ったのは、今回のチケットが当選した時についでに大阪にいるゆりあに会いにいこうと連絡を取った時だった。
「まちこ〜!気合い入れてこね!」
再会の挨拶もそこそこに、ライブ会場に向かって歩き始める。
今回はどうしても欲しいグッズがあったので、はやめに物販に並ぶために前日入りまでしたのだ。
(ゆりあ、なんか垢抜けたなあ)
カメラも繋いでトークしていたから顔を見るのはほんの数日ぶりとはいえ、ノーメイクと部屋着ではない姿は久しぶりだ。
お互い都内に勤務していて仕事終わりや週末に頻繁に会っていたころとは違って、髪が伸び、服のテイストも変わった親友になんとなく遠くへ行ってしまった感を感じてしまう。
「大阪転勤してからどれくらい経つっけ?」
「うーん、半年くらいかな。なんで?」
「東京いたころと雰囲気変わったような気がして。なんかあった?」
「…あー、、実は彼氏できた」
何それおめでとう!と心から喜んだ後に、自分は独り身という事実と、恐らくそれに気を遣ってゆりあも話せずにいたんだろうという推察にたどり着く。
(友達の幸せを純粋に喜びたいのに、、こんな風に思ってしまう自分が嫌だな、、)
ゆっくりと進む物販の列に並びながら、ゆりあの恋愛話を聞く。
付き合いたての微笑ましいエピソードを聞いている内にもやっとした気持ちはどこかへ消えていった。
「やったー!ゲット!!」
前日入りと早起きの甲斐あって、お目当てのぬいぐるみを買うことができた。元々販売個数が少ないと言われていた限定品だったが、昔とは違ってライブのチケットを持ってることを認証した人しかグッズを買えないようになったので、転売ヤーの購入が減って、常識の範囲内で頑張ればゲットできるようになってよかったと思う。[※1]
グッズが買えた後はほっと一息。ライブチケットと連動して会場周辺の飲食店の混雑情報が案内されるようになっているので、それを確認して、会場からは少し離れるけれど徒歩圏内で落ち着いて座れるお店に移動する。[※2]
ランチを食べてドリンクバーを大満喫しながら、チケットについている予告動画を見たり、おしゃべりしているとあっという間に開場時間がやってくる。[※3]
昔はスタッフさんが目視でチケットの確認をしていたらしいけれど、いまはエントランスにタッチすればいい端末が置いてあるので入場はとてもスムーズ。入場の認証をすると自分が入ったエントランスからどっちに行けば自分の席があるのかをチケットが教えてくれるし、座席でも端末認証するので席間違いのトラブルもない。[※4]
ライブ初心者でドキドキしていたけれど、あまりの簡単さに逆に何か見落としたりしていないか心配になるくらいだった。
ライブがはじまったらもう目の前のことを目と耳に焼き付けることに全力。
こっちを見てくれなくてもいい、ここに存在してくれているだけで尊いし、同じ空気を吸っているという事実だけで幸せ。
アンコールのラスト曲が終わった瞬間、ほろりと涙が流れた。
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