Non-Fungible Love 〜 case. MACHIKO with 生春巻き 〜
窓の向こう側は暗く、車内の照明に反射してよく見えない。新幹線が東京駅を出発して早々に夜ご飯を食べ終わってしまい、手持ち無沙汰で外を眺めてみたもののすぐにやめてしまった。
目の前のテーブルには、生春巻きの空き箱と使い終わった割り箸が置かれている。売り場までは行ったのに、駅弁は買えなかった。
数えきれない種類の中から、みんなどうしてあんなにすぐに1つを決められるのだろう。
美味しいものは大概好きだし、嫌いなものも特にない。なのに、大量に並ぶ弁当の前に立って決めかねている自分の後ろから、そこに立っているのが邪魔だと言わんばかりの態度で何人もが手を伸ばして弁当を選んでいく様に気後れしてしまって、結局は駅弁売り場を出て隣のコンビニに入り、インフルエンサーさんのvlog動画を観てクーポンをもらった生春巻きと、烏龍茶のペットボトルを買ったのだった。
(生春巻きおいしかった、けどね)
HABETを開いて、生春巻きのクーポンが使用済みになっていることを確認する。[※1]
そういえば、過去のカードのアルバムをしばらく開いていなかったと思い出して、タブを切り替えた。
(あ、そうか、これが見たくなくて開いてなかったんだった)
約1年前の日付の、大阪にある某テーマパークのパークチケットカードと、提携ホテルの宿泊記念カード。
ある仕事終わりの夜にビデオ通話をしていて、ふいにウォレットを開くように言われて見たらこの2つのカードが届いていた。[※2]
「まちこ、行ったことないって言ってたから。来週末一緒に行こ」
サプライズプレゼントは涙が出るほど嬉しくて、ウォレットにカードが残るのはわかっているのに何度もスクショを撮ってしまうくらいだったけれど、今となっては切ない思い出の品になってしまった。
その切なさも、切なさに浸ることも、夜の新幹線には何だか許される気がする。
カードをぼんやりと眺める内に名古屋に着き、そこで乗ってきた前の席の人が何も言わずにシートを倒しても気にならなくて、思い出の記憶を反芻している間に気づけば新大阪に到着してしまった。
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